当院では、これまでに多くの顔面神経麻痺患者(ベル麻痺、ハント症候群)さんに鍼灸治療を行ってきました。
鍼灸の有効性や安全性については学会誌等に多数掲載されています。
2023年12月時点までで2,000名以上の患者さんに鍼灸治療を実施してきており、医療関係者の方、知人の紹介やインターネットで調べて受診されています。
現在、鍼治療にエビデンスがあると認められてはいませんが、西洋医学的検査で全く反応が無い場合でも、3ヵ月以内に改善した例や、6ヵ月以上経っても改善していない顔面神経麻痺でも治癒及び改善した例もあり、鍼灸治療には麻痺の回復を促す効果があります。
その作用は、顔面神経や顔面神経管を含めた周辺組織の血流を促し、麻痺の回復を促進する効果が考えられます。
・使用する鍼について
当院では、太さが0.18㎜(髪の毛と同じくらいの太さ)と非常に細い鍼を用いて、治療ポイントに5~10㎜くらい刺入します。
使用する鍼は、すべて使い捨てとなります。
・治療を始めるタイミング
とくに発症後1ヵ月前後の時点で麻痺の回復が停滞している場合は、鍼灸治療をすると良い結果が出ます。
当院の治療経験上、鍼灸治療を開始してから表情がよくなった、目や顔の表情筋の動きが軽くなりスムーズになるといったお声が多くあります。リスクとしては、内出血や刺鍼時の少しの痛みなどが考えられます。
⑴ 1ヶ月以内
原則として、西洋医学的治療を優先してもらう。
⑵ 1ヶ月〜6ヶ月
週1~2回の鍼治療を行う。
⑶ 6ヶ月〜1年
重症例では3か月くらいまでに鍼治療を開始することがベストになると考えます。
⑷ スタート時1週に1〜2回の鍼治療を行う。
鍼治療の中止を勧めて不安が強くなる場合、徐々に治療間隔を空けていくようにする。
1年以上
自覚症状が改善されることがあり、患者さんの希望があれば鍼治療を行う。
治療間隔は患者さんと相談する。
発症後1年以上経過した患者さんにも積極的に鍼治療を勧めます。基本的にはどのような病期においても対応は可能と考えています。(実際、1年経過後も改善が見られる方が多数いらっしゃいます。)
・顔面神経麻痺における鍼治療について
鍼治療は、麻痺側顔面部への置鍼を中心に行い、全身への鍼治療も行います。
顔面神経麻痺に悩む方々の参考になれば幸いです。